日本刀型ネクタイピンを彫金技術等で作る作業工程!

今回は『日本刀型のネクタイピン』の作成風景を紹介してみますよ。

 

私のホームページでも紹介してますが、完成写真はこんな感じ。

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日本刀ネクタイピン

んでは、どんな風に作っていったのか手順を写真で紹介していきます。

まずは、純銀などを取り扱っている地金屋さんで純銀を購入したものを溶解します。

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純銀の地金

最初はこんな感じの純銀の粒です。

ちなみに、市販されているシルバー製品で『SV925』と書かれているのは純銀ではなくて含有率が【銀92.5%+銅(など)0.75%】混ぜているものになります。

混ぜ物じゃん!とか思われるかもしれませんが、純銀でアクセサリーを作ると柔らかすぎて、すぐに曲がったり欠けたりするのでアクセサリーに不向きなので合金にしているんですね。

ちなみに、純銀を92.5%以上含有していれば0.75%他の金属が混ざっても法律上【純銀】と扱うようになっているので詐欺ではないですよ(笑)。

 

で、これを溶解します。

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溶解中の純銀

900℃くらいまで熱すれば水銀のようにプルプルした球状の液体になってゆきます。

(私が作るアクセサリーは含有率を計量するのがめんどくさいので基本的に純銀のみで作ります。)

完全に溶解したらこれを金型に流し込みます。

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金型

金型の中で固まった棒銀です。

完全に溶け切っていなかったりすると『ス』が出来るので脆くなるので注意です。

棒銀が完成したらハサミでバリをとって、金槌で引き伸ばしてゆきます。

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ひたすら叩け!

叩き続けるといっても、何も考えないで力任せにぶっ叩いていると棒銀の角が歪んできて後々加工時に後悔することになるので、丁寧に無心で叩きまくります。

ローラーがあれば簡単に規定値の太さまで引き伸ばせますが、私が所属している工房ではローラーが使えない状態でも加工できるよう、生徒さんの最初の課題は【正方形の断面を維持したまま1㎜角の太さまで引き伸ばす】課題になってますね。

大抵の人がこの段階で挫折して辞めていってますね。

 

ある程度の太さや長さになったら糸鋸で切り出して作りたい長さに整えます。

日本刀の製造工程でいう『素延べ』ですね。

 

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茎や切先を成型する『素延べ』作業

ここでは『素延べ』状態の写真を撮り忘れたので一気に『火造り』という薄い刃を金槌で叩き出した状態の写真になってます。

 

ここまで行ったら次はやすりで形を整える『荒仕上げ』の工程に入ります。

ヤスリで刃が歪まないように正面から確認しつつ整えてゆきます。

ここで歪むと鞘に入れられなくなるので面倒でも丁寧にやらないとダメダメです。

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荒仕上

ここまでくると何となく『刀』という感じがしてきますので、作ってる最中にテンションが上がる作業ですw

次は刃に刃紋をつける作業です。

『土置き』と呼ばれていて刃紋の形を予想して置いていきますが、この刃の上に載せている『焼刃土』は刀鍛冶さん個々に各配合率や違う素材の浸炭触媒を用いて加工していて大抵は一子相伝やら門外不出だったります。

なので、私は科学的にアプローチしておりますが詳細は秘密にしておきますw

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土置き

あとは『焼き入れ』した後にちゃんと刃紋と『反り』が付いたかを簡単に砥いで確認します。

まぁ、最近はここの手順は簡略化する方法を見つけたのでほぼ省いてますね(;'∀')

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砥ぎ

で、砥ぎ終わったのがこちら

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刃紋が消えた…

砥ぎすぎて刃紋が消えましたw

刀身が細くて小さいと砥石に対して角度が付かず、刃部分だけじゃなく全体まで砥いでしまうこともあって失敗すると消えますw

なので、現在はこの手順は上記で述べたように簡略化するようにしております。

あとは、『反り』が曲がりすぎたり歪みすぎていたら金槌やらで修正します。

 

次は柄と鍔とハバキを『透かし彫り』や『テーパー』のパーツを作る要領で作って、1.5mmにスライスした『朴』の木材で柄と鞘を作ってゆきます。

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柄の作成

柄を切り出し削ったら柄に『縁』と『頭』をつけて形を固定します。

 

作り終えたのでとりあえず、柄部分を組み立ててみる。

 

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柄の組み立て

ここで気づいたのが、先に目釘穴を作るとこの段階で若干ずれるから穴のあけ直しが必要だとわかりましたw

あとは、鍔の部分もぐらつくので『切羽』を噛ませないとダメになりました。( ;∀;)

ちなみに『切羽詰まる』はこの切羽が抜刀時に鯉口部分に詰まって刀が抜けなくなり絶体絶命の状態に陥ることから引用されたらしいですぞ。

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柄の組み立て②

組み立ての最後は目釘穴に目釘をぶっ刺して、鍔と柄とハバキの間が緩んでいないかの確認です。

ここで緩んでると直すのがめんどくさいので泣けてくるんですよね;;

目釘は竹串か、つま楊枝を削り出して穴の口径に合わせております。

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柄の組み立て③

これで柄の部分はとりあえず完成にして、次は鞘の作成です。

柄と同じく1.5mmの厚さに加工してもらった『朴』の木材に、削りぬく刀身部分を転写します。

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鞘の作成

削りぬいたら両側面を張り合わせて、刀身とのかみ合わせを確認します。

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噛み合わせ

刃を収めた時に貼り合わせた鞘の隙間があいてしまう場合、刀身が中で当たってしまっているので、そんな状態で完成させるとそのうち鞘が分解してしまいます。

なので、何度か刀身に油を塗ってから抜き差しして、鞘の内部の油が付く部分を削りながら様子を見て油が付く箇所がない事を確認してから鞘を貼り合わせます。

ちなみに、本物の鞘は貼り合わせる際に米などを磨り潰して作る接着剤を使用しますが、私はめんどくさいのでそこの部分は木工用ボンドにしております。

まぁ、調べればやれないこともないでしょうが乾燥に時間がかかるっぽいんですよね~…。

 

あとは、この時点で柄巻きも終わらせておりますが、柄巻きの画像はありません。

何故って…。

柄巻きをしてみればわかるのですが、どうしても作業上、両手がふさがってしまうので写真を撮るどころではなかったからですw

写真を手伝ってくれる家族でもいれば撮れたのかもしれませんが、寂しい独り身なのでそこは勘弁してくださいw

 

最後はカシュー材の漆工芸風塗料で鞘を塗って、ネクタイピンの土台にくっつけて太刀緒を浪人結びすれば完成です。

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カシュー塗料で着色

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ミサンガの要領で太刀緒を作る

そして、日本刀型ネクタイピン試作品一号機。

『鈍丸』の完成です!『ドンマル』じゃなくて『ナマクラマル』ですねw

まぁ、一番最初に作ったのでネクタイピンの土台をくっつける方向を間違えてしまい、上下逆転しちゃってますが、あくまで試作品なのでこれで良し!

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完成

 

最後に、ブログ冒頭に掲載しているネクタイピンですが、あれは6本目の製品版となる作品で、青森の津軽塗の伝統工芸士の方に協力していただき本物の漆で鞘を塗っていただきました。

 

ちなみに完成した作品は素材費、工賃、他の作家さんへの依頼料など込々で、個人的な出来具合を見つつ大体1~5万円前後でメルカリなどのフリマサイトで販売しております。

 

刀以外にも変なものをちょこちょこ作って完成次第適当なタイミングで出品してますので、気になる方は私のホームページをたま~に確認してみてくださいねw


ちなみに『UNLIMITED ART WARKS』で『UNLIMITED ART WORKS』だと別の方のホームページに飛んでしまいますのでご注意くださいねw

 

近場にハンドメイド作品の素材を売っている店がない方はこちらもおすすめ。